歯科医師と離婚問題
歯科医師が離婚する場合、歯科医師特有の問題があるわけではありません。ただし、歯科医師の多くが直面する特に注意しなければならない問題の類型はいくつかあります。
まず、財産分与について
1 財産分与には,夫婦が婚姻期間中に共同で増加させた共有財産を清算するという清算的財産分与があり,これについては基本的に2分の1ずつの分与が基本となります。ただし、財産を保持している者の特殊な才能により特別に財産を増加させたというような場合は、分与の割合は変わることもあります。
2 次に、扶養的財産分与というものがあります。たとえば、夫が歯科医師で妻が専業主婦をしていて、夫には多額の収入があるが、妻は簡単には仕事が見つからず、すぐには経済的に自立した生活を送ることが困難な場合もあります。そのような場合には、扶養的財産分与として、一定の財産分与が認められる可能性があります。
その内容は、一律にきまるものではなく、認められる場合であっても、婚姻期間、有責の有無・程度、夫婦の収入、年齢、子の養育、疾病・身体ないし精神障害等を考慮して判断されます。
3 歯科医師が医療法人の経営者である場合、配偶者が役員等に就任しているケースや出資をしているケースもあります。離婚の際には、これらの清算を求められることもあります。
4 退職金についても検討する必要があります。医療法人等を経営している場合には、節税対策として法人が生命保険等に加入し、将来の退職金の原資にするように備えている場合があります。この場合、ストレートに医療法人の資産が歯科医師本人の資産になるわけではありませんが、退職金規程等が医療法人に存在し、かつ、その原資とするために、医療法人が生命保険等に加入している場合は、将来の退職金の支給の確実性が高いものとして、将来の退職金の財産分与がなされる可能性もあります。
5 養育費についてですが、歯科医師は高額所得者もいるため、給与所得で年2000万円を超える可能性があります。この場合は、養育費の算定について通常とは異なる計算方法等をとる必要があることも考えられます。