不倫の慰謝料を請求された場合の反論のタイプ
不倫の慰謝料を請求された側が反論する方法は、一定程度類型があります。
いうまでもなく、これらの内容を主張すればいいわけではなく、その事実があることを自分自身が証明しないといけません。
①不貞行為の事実はない
そもそも不貞行為は行っていないとの反論です。慰謝料請求が相手方の誤解に基づく場合には、きちんと反論することが大切です。
不貞行為の事実自体に争いがあるときは、慰謝料請求をする側に不貞行為の事実の立証責任が課されます。
証拠によって不貞行為の事実が立証できない場合には、慰謝料請求は認められません。これは、裁判で問題になることですが、初期の段階から、不貞行為の事実を推認するような事情も含め、こちらに不利になりかねない事実を安易に認めることは敗訴に直結しますので、注意が必要です。
②配偶者が既婚者であることは知らなかった
慰謝料請求が認められるためには、浮気相手が既婚者であることを知っていたか、容易に知り得る状況であったことが必要です。
既婚者の側で独身であるかのように振る舞っていたような場合や、出会い系サイト等で知り合い、お互いのことをよく知らない状況で性的関係をもった事案で問題になる論点です。
③慰謝料請求権は時効により消滅している
慰謝料請求権は、不倫を認識した日から起算して3年で時効にかかります。
なお、こちらが一部でも慰謝料を支払っていたり、慰謝料の支払い義務を認めているような場合には、時効が中断することになります。注意が必要です。
④離婚に際して配偶者から慰謝料が支払済みである
慰謝料請求は、浮気相手のみならず配偶者に対しても行うことが出来ます。どちらに請求するかは請求する方の自由ですが、既に一方から支払がなされた部分については、他方に対して請求を行うことは出来ません(難しい言葉ですが、不真正連帯債務といいます。当事者二人が一つの慰謝料支払い義務を負います)。
例えば慰謝料として認定されるべき金額が300万円の場合に、離婚に際して配偶者から300万円の慰謝料を受け取っている場合には、更に浮気相手に対して慰謝料請求を行うことは出来ません。仮に浮気相手と連絡が取れる状況にあるときは、慰謝料の支払はどのような状況になっているか、確認する必要があります。
⑤不貞行為があった時点では、既に夫婦関係は破綻していた
もともと不倫の慰謝料が認められる理由は、不倫をすることにより、平穏な夫婦生活を壊したからです。そうすると、長期の別居等により、既に夫婦生活の実態がなくなった後に行われた不貞行為の場合には、「不貞行為によって夫婦関係が破綻した」とは言えないため、慰謝料請求が認められない場合があります。
夫婦関係の破綻を基礎付ける事情としては長期の別居が典型ですが、その他夫婦関係がうまくいってなかったことを示す事情も、慰謝料の減額要因になる可能性があります。
⑥まだ離婚をしていない
相手方が離婚したか否かで、慰謝料額は変動します。
離婚成立に至っていない、あるいは今後も離婚をする予定はないという場合には、被った損害は軽微(夫婦関係は完全には壊れていない)であるから、慰謝料額は減額されるべきという考え方です。
相手方の離婚協議の進捗状況は、こちらからは分かりにくい部分もありますので、直接相手方に照会するか、或いは不倫相手と連絡が取れるのであれば、不倫相手に対して離婚協議の進捗状況を確認する方法が有効です。