裁判による離婚
裁判による離婚とは、夫婦間の話し合いによる解決(協議離婚)が成立せず、家庭裁判所の調停でも離婚が成立しなかった場合に、一方当事者が家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、判決という強制力を持って、離婚するかしないかが決まる方法です。
裁判による離婚は、裁判所が強制的に判断する手続ですので、当事者の話し合いがまとまらない場合でも、裁判所が離婚を認める判決を出せば、離婚することができます。
裁判離婚は、協議離婚や調停離婚とは異なり、法律の専門知識・技術が必要となります。裁判離婚をする場合は、訴えを裁判所に提起する時点で弁護士に相談されることをおすすめします。
裁判離婚は、裁判費用の他にも、時間や労力、精神的負担の覚悟が必要です。さらに、望みどおりの判決にならないことがあることも覚悟しておく必要があります。
裁判手続になってからも、話し合いは可能です。最終的に話し合いができず、判決になる場合は、1年はかかります。高等裁判所や最高裁判所で争う場合は、さらに時間と費用がかかります。
裁判による離婚のメリット
・当事者同士で全く言い分が食い違っていて、お互いに歩み寄ることができない場合に強制的に結論を出すことができます。
・話し合いをする際にも、最終的な判決という強制力を見据えてなされるため、調停の場合にはまとまらなかったものも、話し合いで解決することができる場合があります。
・親権、養育費、慰謝料、年金分割など離婚に付随する手続きを一気に解決することができます。
裁判による離婚のデメリット
・裁判による離婚は、「AとBを離婚する」というように、個人のプライベートな 身分関係について国家が口出しをするものです。したがって、裁判による離婚が認められるには、法律上定められた離婚理由が必要となります。
・調停とは異なり、「争い」が前面にでますので、感情的な対立が鋭くなる可能性が高くなります。
4 法律上定められた離婚理由とは?
裁判離婚の場合は、協議離婚や調停離婚と異なり、法律上認められた「離婚理由」がないと認められません。
法律上認められた離婚理由は次のとおりです。
不貞行為
不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて「配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」をいいます。 ただし、すでに婚姻関係が破綻した後に配偶者以外の異性と性的関係を持ったとしても「不貞行為」による離婚の請求はできません。
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なしに、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務に違反する行為をいいます。 単に別居しているだけでは悪意の遺棄には当たりません。
3年以上の生死不明
3年以上の生死不明とは、配偶者が生存を最後に確認できたときから3年以上生死不明であることをいいます。 配偶者には連絡が一切ないが、連絡を取れている人がいる場合などはこの要件には当たりません。
なお、7年以上連絡が取れない場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができ、認められると配偶者は死亡したものとみなされます。
回復の見込みのない強度の精神病
回復の見込みのない強度の精神病にかかっているときも離婚原因となります。
これは、相当重い精神病にかかっていることを前提としますので、精神科の治療を受けている事情があったり、うつ病や統合失調症にかかっているというだけでは、この要件には当たりません。
また、回復の見込みのない強度の精神病にかかっているという認定がなされる場合もその配偶者の今後の生活について必要な手当をとることが離婚が認められる上では重要になります。
婚姻を継続しがたい重大な事由
上に述べた4つの理由とは違って、包括的な理由となります。
客観的に婚姻関係が破綻しているといえるかどうかが重要な要素になり、その場合には別居の有無や期間が重視されます。通常は3年程度別居していれば離婚理由になりますが、それよりも短い期間でも離婚できることは多いです。
また、上の4つの理由に該当しうるような理由があるけれども、一つ一つの理由は弱いという場合に、そのほかの事情も含めて総合的に判断されるのがこの要件です。
性格の不一致、配偶者の親族とのトラブル、多額の借金、宗教活動にのめりこんで家庭を顧みない、暴力、ギャンブル、浪費癖、性交渉の拒否、犯罪による長期懲役など。
離婚をしたい理由として「性格の不一致」、「価値観の相違」、「愛情の欠如」をあげる人は多くいますが、これだけでは裁判で離婚が認められる理由とはなりません。この場合は、今までの生活の経緯や細かいトラブル、相手の言動などの「小さな事情」をたくさん積み上げて、「大きな事情」となっていることを裁判官に理解してもらえるようにします。
裁判上の離婚が認められるには、客観的な証拠が重要となりますので、DVを受けた場合は医者の診断書を取得しておくことや、不貞行為がある場合は、相手方と連絡を取ってその内容を録音する、相手から内容について認める書面をもらっておく等の準備が重要となります。 ただし、客観的な証拠がない場合でも、自分で詳細なメモをとっておいたりすることが重要な証拠となる場合もありますので、準備の必要性に気がついたときからでも遅くはありませんから、いつ、どこで、誰に何をされたか、どのような言動があったか等について、メモしておくことをおすすめします。
そのほかに婚姻を継続しがたい重大な事由になり得るものとしては、配偶者の宗教活動、性的不能、犯罪、配偶者との親族の不和、配偶者の浪費や借金があること等がありあますが、これらの場合もケースバイケースとなります。
裁判による離婚の手続きの流れ
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(裁判の期日は通常1ヶ月に1回と考えてください)
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(ただし、離婚訴訟においても話し合いは行われますので、判決にまで至るケースはむしろ少ないといえます)