離婚とお金の問題

離婚に際して、お金の問題が絡んでくることは、 ただでさえ気の重い離婚の問題が複雑化するようにも見えます。

お金を請求された相手方は、  「結局は金目当てなんだろう」 と心ない言葉をあなたにぶつけるかもしれません。

ですが、離婚は新しい生活のスタートです。

過大な請求は禁物ですが、あなたが相手に請求できるものを請求することに何も恥ずべきことはありません。 後ろめたいものを感じる必要もありません。

特にあなたが今後の生活をしていく経済的基盤がない場合には、 お金の問題を解決することは非常に大切なことなのです。

慰謝料とは

慰謝料とは、精神的な損害に対する賠償金のことを言います。

離婚の際に、離婚の原因を作った相手方に対して慰謝料を請求することができます。 ただし、離婚する状況となった場合に当然に認められるものではありません。 慰謝料が認められるだけの事情があり、かつその事情を証明できなければなりません。 離婚してから3年が経過すると離婚を理由とする慰謝料は時効により請求できなくなります。

慰謝料が認められるかどうか

慰謝料が認められるかどうかは、次のような事情を元に判断されます。

・結婚から離婚までの期間の長さ
・離婚に至る経緯 ・当事者の年齢、職業、収入
・結婚生活の実態 ・別居の期間
・子どもの有無 ・その他

※不貞行為や暴力(DV)があるような場合は、慰謝料は認められやすくなると言えます。

慰謝料の相場

離婚における慰謝料は交通事故の場合のように定型化されていません。 個々の具体的なケースによって金額も変わってきます。

200万円から300万円が認められるケースが多いというデータもありますが、必ずしもそうは言えません。 上記2にあげたような事情の内容によって大きく異なってきます。

慰謝料を認めてもらうには

客観的な証拠があることが大切です。

例えば、

不貞行為の場合は、 妻または夫と不貞行為の相手のメール、一緒に写った写真、電話の通話記録(電話会社に請求)、手紙、手帳、2人で宿泊したことが記載されているレシート、2人で食事したことが分かるレシート等です。

DV(家庭内暴力)の場合は、 暴力を受けた直後の医師の診断書等が重要です。

※このような客観的な証拠がない場合でも、あなた自身が相手の言動等を事細かにメモして置いたものや日記なども証拠になります。

不貞行為の場合

不貞行為をした夫または妻の相手方にも慰謝料を請求することができます。 ただし、認められる慰謝料の金額は倍になるわけではありません。

慰謝料請求の手続

慰謝料をそれだけ単独で請求することもできますし、離婚調停や離婚の裁判の中で一緒に請求していくこともできます。

離婚成立後であっても請求は可能です。

養育費とは

養育費とは、未成熟子が社会人として自活するまでに必要な費用をいいます。 離婚に伴って、一方が子どもを引き取った場合には、子どもを引き取った方が相手方に養育費を請求することができます。

養育費の額について

基本的には権利者(養育費をもらえる人)と義務者(養育費を支払う人)のそれぞれの収入金額、子どもの人数等により定まります。

具体的には、裁判所のホームページで公開されていますので参考にしてください。 特別な事情がある場合には、通常よりも多く養育費を請求できることもあります。

何歳まで養育費をもらえるか?

この点については、明確な規定はありません。

養育費は「まだ社会人として自活できない人を養うために必要な費用」のことですが、 18歳で働くのが普通なのか、大学を卒業するまでか、あるいは20歳までかはそれぞれの家庭の事情により異なります。

例えば、親の学歴からして子どもが大学に進学することが当然であると言えるような場合は、大学を卒業するまでの養育費を請求できることがあります。

養育費請求の手続

離婚する際に当事者同士で話し合って決めることもできますし、離婚調停や離婚の裁判の際に合わせて請求することもできます。

養育費の請求は相当長期間にわたることが通常ですので、当事者間で話し合いで決める場合には、「公正証書」を作成して、義務者が支払わない場合は直ちに強制執行ができる状態にしておくことをおすすめいたします。

調停や裁判で養育費が定められた場合には、調停調書や判決に基づいて強制執行することができます。

財産分与とは

財産分与とは、離婚をした者の一方が相手に対して財産の分与をすること、求めることを言います。 対象となる財産のうち、2分の1を請求するケースが多いと言えます。 離婚の時から2年を経過すると財産分与は請求できなくなりますので注意が必要です。

財産分与の種類

財産分与には、

・精算的財産分与(夫婦の共同財産の精算)
・扶養的財産分与(離婚後の生活のため)
・慰謝料的財産分与(慰謝料と重なります)

があります。

財産分与を請求できる財産の範囲

相手が持っている財産の全てについて分与することを請求できるわけではありません。 対象となる財産は「夫婦が婚姻中に協力して形成してきた財産」のみです。

ですから、

・相手方が結婚する前から有していた財産
・相手方が相続により取得した財産 などは、夫婦が協力して形成した財産とは言えませんので、分与の対象にはなりません。

財産分与を請求する手続

当事者間の話合いにより決めることもできますし、調停離婚、裁判による離婚の際に合わせて請求することもできます。

離婚成立後に財産分与のみを請求することもできます。

婚姻費用とは

婚姻費用とは、簡単に言えば婚姻生活中の生活費のことを言います。 つまり、まだ離婚をしていない状態の時に、夫婦の一方が相手方に対して、請求できる生活費のことを言います。

同居している場合には、生活費を負担してくれる場合が多いでしょうから、主に別居している場合に問題になります。 相手方に請求することができる婚姻費用の中には養育費も含まれます。

相手方に請求することのできる婚姻費用

夫婦が別居状態にあれば、生活が二重になるため、生活費は同居している場合よりもかさみます(例えば、家賃等)。

ですが、相手方に請求することができるのは、現実の生活にかかるすべての費用ではありません。

具体的な金額は、権利者(婚姻費用を請求する人)の収入と義務者(婚姻費用を支払う人)の収入や子どもの人数等により定められます。

裁判所のホームページに婚姻費用の算定表が載っていますので参考にしてください。

婚姻費用を請求するための手続

当事者同士の話合いにより具体的な金額が決まれば、それに基づいて支払ってもらいます。

当事者間で決まらないときは、婚姻費用請求の調停を申し立てます。

調停により話が決まらないときは、裁判所の審判(※)により決まります。 ※審判とは、手続上裁判とは違いますが裁判所が判断するものです。

年金分割とは

年金分割とは、 公的年金のうち2階部分に当たる厚生年金や共済年金の保険料納付実績を分割する制度を言います。

年金について

年金の構造については、その階層構造から通常建物に例えられ、「3階建て」という説明がなされます。

「3階建て」のそれぞれの階の詳細については、下記の通りです。

  1階・・・国民年金(基礎年金) 全ての人が加入する義務があります。

  2階・・・厚生年金、共済年金
       会社員や公務員等が加入する年金です。

  3階・・・国民年金基金、厚生年金基金、確定給付企業年金などの1、2階部分の
       年金を増額するために入る年金のこと

このうち、離婚による年金分割が問題になるのは、2階部分のみです。 年金分割は、将来年金がもらえるようになったときにもらった年金そのものを分割してもらえるという制度ではなく、年金を納付した実績を分割するという制度です。

つまり、相手方が婚姻期間中に納めた年金保険料のうち、最高で2分の1までをあなたがその年金保険料を納めたことに記録を書き換えてもらう制度と理解すればよいでしょう。

ですから、年金分割をしたあとは、あなた自身がその保険料を支払ったことになり、あなた自身の年金として給付されることになります。

※ 誤った認識の例   夫が月に20万円年金をもらえる→半分の10万円を毎月夫からもらえる

年金分割の手続

あなたが、平成20年4月以降に婚姻し、かつ、相手方の被扶養配偶者となっていた場合には、年金分割の請求書を社会保険庁に提出すれば分割がなされます。

あなたが、平成20年4月以前に婚姻していた場合、あるいは相手方の被扶養配偶者となっていなかった場合は、 年金分割の割合(最大で2分の1)を相手方当事者と合意をし、公正証書等の書面を作成するか、調停や審判を申し立てをし、分割割合を定める必要があります。

離婚の調停や裁判の際に同時に年金分割の割合を定めることを申し立てることもできますし、離婚が成立した後でもすることができます。

なお、離婚成立の時から2年を経過すると年金分割を請求することはできなくなります。


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